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分、
記憶の旅。
単に記録とするには、
この記憶にとってあまりに浅はかだと思った。
言わずもがな、映像は記録となってしまうし、
人や状況に応じて変化していく〈記憶的〉なものを
映像化するのは、常に矛盾を孕む。
脚本すらも意味がないと思ったが、
単に構成をして、ありのままの自死と向き合う人々
を映し出すことは、我々製作側からの誠意がないと思った。
だから、喪失だけではないこの記憶、
お世話になった〈彼〉に対して我々なりの敬意を、
『彼がここを去っていった』ということではなくて、
『彼がここにいた』ということを映像化することにした。
話しづらいこともたくさんあったであろう、
故人に対するインタビューを受けてくださった方々に、
絶大な感謝を込めて。
風が吹く。自転車をこぐ音。ジリンとなった自転車のベル。
隣人が弾くピアノの音。太陽に眩しく反射する、
夏の木々と、この一三六分の旅。
梅村和史
唯野浩平
山本真莉
『静謐と夕暮』
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